居酒屋へ興味を示そう

W、24歳の春。 学生時代から温めていた夢。
1年間、佐川急便のセールスドライバーをして、開業資金300万円をためた。 当初は、横浜・伊勢佐木町でライブハウス風レストランを開く考えだった。
「そんな店はすぐつぶれてしまう。 だいたい地に足が着いていない。
資金計画もずさんだ。 飲食店の経営ノウハウも無きに等しい」。
相談に乗ってくれたT8社長I「最初は、今日のお客はまた来てくれるだろうか、心配でたまらなかった」とW現在は客の注文を受けた接客係が、その場でハンデイターミナルに打ち込むと、厨房に直接電送で伝わるオーダーエントリーシステムがとられている。 当時はまだ手書きの複写式伝票で、たいていは1枚に客の注文すべてを書きとっていた。

れ、と説得された。 「目の輝きが違っていた。
若いのになかなか見どころがある。 何かどでかいことをしでかすような、そんな雰囲気を感じた」Iは、Wの第一印象をそう述懐する。
高円寺店の営業譲渡金5000万円は、Iの口利きでノンバンクなどから工面できた。 おしぼりは、ひざをついて必ず開いて手渡す。
オーダーを取る時は、お客を下から見上げるようにする。 灰皿は吸い殻3本で交換。
横浜・関内の高級クラブで1カ月間、ボーイ見習をして身につけたきめ細かいサービスを、自ら率先して実践した。 「お客さまに対して、奴隷になったつもりで誠心誠意接する」。
居酒屋のイメージを一新した接客姿勢が、サービスの差別化を生み、集客に直結した。 T8の直営店のころ月間750万円だった売り上げが、半年で1500万円に倍増、利益は10倍の3060万円に跳ね上がった。

「繁盛店の店長になる極意は何ですか」。 今でも懇親会などで、若い社員によく尋ねられる。
「お客さまが望むことを、ただひたすらやってきただけだ」と答えるのが常だが、そういえば普通とは違う自分だけの「店長作業」が、この時代1つだけあった。 1日の仕事が終わり、レジを締めた午前5時。
100枚ぐらいになったすべての注文伝票を、1枚1枚ひっくり返し、客の顔を思い浮かべながら、その日の営業を振り返った。 「ウイスキー2本」。
初めてボトルを入れてくれた客だ。 うれしくて名前で呼んだら驚いていたつけ。
そうだ明日から皆に呼び掛け、名前の分かったお客さまの「特徴入り名簿」を作成しよう。

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